経理担当者の不審な行動5選|横領の予兆を見抜くチェックリスト
「長年信頼していた経理担当者が、実は数千万円を横領していた」
これは、私たち四日市探偵事務所に日々寄せられる相談の中で、最も深刻なケースの一つです。多くの経営者様は、発覚した後に「あの時の行動はおかしかった…」と後悔されます。横領には、必ずと言っていいほど「予兆(サイン)」があります。
本記事では、横領や不正会計の「潜在的な予兆」を見抜くための危機管理コラムです。元IPO準備企業の内部監査人であり、CISA(公認情報システム監査人)の知見を持つ私たちが、行動パターン5選、心理的メカニズム、具体的な不正手口を詳細に解説します。
「なんとなく怪しい」という直感は、企業の危機管理において最も重要なセンサーです。その直感が正しいかどうか、このチェックリストで確認してください。
1. 横領の根本原因:不正のトライアングル理論
具体的な行動リストに入る前に、なぜ多くの経営者が横領を見逃してしまうのか、そのメカニズムを理解しておく必要があります。それは、横領を行う社員の多くが「能力が高く、真面目で、信頼されている古参社員」だからです。
心理的なバイアス(思い込み)が、目の前にある小さな違和感を打ち消してしまいます。これを不正防止の基本理論である「不正のトライアングル」で紐解くと、以下の3要素が揃った時に不正が発生します。
1-1. 動機 (Pressure):追い詰められたプレッシャー
不正の最初のきっかけは、個人的な金銭的問題です。単なる浪費だけでなく、「生活水準を落とせない」という見栄や、ギャンブル依存、家族の病気など、誰にも相談できない金銭的プレッシャーが動機となります。
1-2. 機会 (Opportunity):内部統制の欠如
動機があっても機会がなければ横領はできません。最も危険なのは、「経理業務の属人化」です。通帳、印鑑、会計ソフトのパスワードを一人で管理し、誰もダブルチェックをしない環境が、犯行の「機会」を生み出します。
1-3. 正当化 (Rationalization):自分を納得させる理由
「私はこれだけ会社に尽くしているのに給料が安い」「社長は経費を使い放題だ」「一時的に借りるだけで、ボーナスで返す」といった歪んだ正当化により、罪悪感を麻痺させて犯行に及びます。
不正会計の手口は、究極的にはシンプルです。「入金を少なく見せる」か「出金を多く見せる」か、このどちらかです。しかし、それを隠蔽するために帳簿を複雑にし、ブラックボックス化させます。「経理は私にしか分からない」という状況を作ることこそが、横領犯の最初のステップなのです。
2. 【チェックリスト】横領の予兆となる5つの不審行動
以下の5つの行動のうち、1つでも当てはまる場合は注意が必要です。複数当てはまる場合は、すでに「不正の進行中」である可能性が極めて高いと言えます。
- 休暇を頑なに取ろうとしない(業務の抱え込み)
- 生活レベルが急に派手になった(身の丈に合わない浪費)
- 経理に関する質問をすると不機嫌・攻撃的になる
- 小口現金や領収書の「小さなミス」が増えた
- 特定の取引先と過度に親密である
① 休暇を頑なに取ろうとしない(業務の属人化)
最も典型的なサインです。「責任感が強いから休まない」のではありません。「自分が休んでいる間に、代理の人間が帳簿を見て不正に気づくこと」を恐れているのです。
金融機関では不正防止のために「連続休暇(2週間程度)」を強制的に取らせる制度がありますが、これは担当者を物理的に業務から引き剥がし、不正がないかをチェックするためです。
② 生活レベルが急に派手になった(不相応な資産)
給与水準が変わっていないのに、高級ブランド品、新車(特に外車)、頻繁な旅行などの変化が見られた場合は要注意です。横領したお金は「泡銭(あぶくぜに)」であるため、金銭感覚が麻痺し、派手に使ってしまう傾向があります。
③ 経理に関する質問をすると態度が急変する
社長や役員が「この数字がおかしくないか?」と尋ねた際、「私のことが信用できないんですか!」と逆ギレしたり、「専門的なので説明しても分からないと思います」とはぐらかしたりしませんか?
やましいことがなければ、経理担当者は数字の整合性を冷静に説明できるはずです。感情的な反応は、防衛本能の表れです。
④ 小口現金や領収書の「小さなミス」が増えた
横領は、最初は数千円の「借り入れ(のつもり)」から始まります。「バレなかった」という成功体験が、金額をエスカレートさせます。「小口現金が合わない」といった事象を単なるミスとして処理していませんか?それはミスではなく、管理体制を試す「テスト(試し行為)」かもしれません。
⑤ 特定の取引先と過度に親密である
社内の着服だけでなく、取引先と結託した「キックバック(リベート)」も企業調査でよくある事例です。相見積もりを取らず特定の業者にばかり発注していたり、担当者同士で頻繁に飲みに行っている場合は、発注額を水増しして還流させているリスクがあります。
削除された「裏帳簿」や「横領の証拠メール」を復元します。CISA資格者によるデジタルフォレンジックの技術・手法についてはこちらをご覧ください。
デジタル調査の詳細を見る3. 経理不正の具体的な手口と監査的着眼点
ここでは、より踏み込んで、実際にどのような手口で不正が行われるのかを解説します。
手口A:架空請求とキックバック
実体のないペーパーカンパニーや協力者に架空の請求書を発行させ、会社から支払わせた金を着服します。または、正規の取引額に上乗せして支払い、差額を個人口座にバックさせる手口です。
監査ポイント:新規取引先の実在性確認(登記簿、住所の確認)や、相場とかけ離れた単価設定がないかをチェックします。
手口B:売掛金の着服と「入金消込」の操作
顧客から現金で集金した売上をポケットに入れ、帳簿上は「未回収」のままにする、あるいは別の顧客からの入金を充当して穴埋めする(ラッピング/自転車操業)手口です。
監査ポイント:特定の顧客だけ入金サイトが遅れていないか、入金日と領収書の日付にズレがないかを確認します。
4. 誤った初動が招く致命的なリスク(NG行動)
もしチェックリストに当てはまり「怪しい」と思ったとしても、いきなり本人を問い詰めたり、露骨に帳簿を調べ始めたりすることは絶対に避けてください。
NGその1:本人への直接尋問
確実な証拠がない段階で問い詰めても、「計算ミスです」としらばっくれられます。それどころか、警戒した本人はその日のうちにデータを削除し、紙の領収書をシュレッダーにかけ、証拠を完全に消し去ってしまいます。
NGその2:中途半端な社内調査
顧問税理士への相談も慎重に行うべきです。稀なケースですが、税理士が善意で「社長が気にしていましたよ」と本人に伝えてしまうリスクがあるからです。
調査は、「本人に気づかれないように」「客観的な証拠を固める」ことが鉄則です。
5. 四日市探偵事務所の専門的解決アプローチ
では、具体的にどう動くべきか。企業リスク対策のプロフェッショナルである四日市探偵事務所のアプローチをご紹介します。
STEP1:予備調査(監査的アプローチ)
私たちには「元IPO準備企業の内部監査人」が在籍しています。まずは秘密裏に、過去の決算書や元帳データをお預かりし、監査の視点から「不自然な金の流れ」や「矛盾点」を洗い出します。探偵の勘だけでなく、会計のロジックで不正の仮説を立てます。
STEP2:行動確認(アナログ調査)
「横領した金を使っている瞬間」を押さえます。会社を休んでいるはずの日に何をしているのか、頻繁に会っている人物は誰か(キックバックの相手か)、羽振りの良い生活実態を映像で記録し、言い逃れできない証拠とします。
STEP3:デジタルフォレンジック(デジタル調査)
これが決定打になります。本人が使用しているPCや社用スマホを解析します。「削除したはずの裏帳簿(Excel)」や「私用メールに転送した顧客リスト」などを、CISA(公認情報システム監査人)の技術で復元・保全します。
6. 結論:疑念を放置せず、専門家の「目」を入れること
横領は、放置すればするほど金額が膨れ上がり、会社の経営を揺るがす事態になります。また、他の社員に示しがつかず、組織全体のモラル崩壊(腐敗)を招きます。
「長年の付き合いだから」という情は、一度捨ててください。会社と、真面目に働く他の従業員を守るためには、毅然とした対応が必要です。
四日市探偵事務所は、「会計がわかる」「デジタルに強い」「法務に詳しい」という、企業調査に特化した探偵社です。三重県・愛知県を中心に、多くの企業様の「見えない不安」を「確実な証拠」に変えてきました。
まだ確証がなくても構いません。「なんとなくおかしい」という段階でのご相談が、被害を最小限に食い止めます。まずは無料相談にて、現状をお聞かせください。